日本は観光大国を目指し、沢山の外国人が入国されます。また、少子化によって外国人労働者を幅広く受け入れて経済が滞らないように積極的に外国人を受け入れているのですが、誰でも入国できるという訳ではありません。今回は入管法5条に定めれられている「上陸拒否事由」について解説していきます。
入国を拒否されるケース
日本にとって上陸を認めることが好ましくない外国人の類型が上陸拒否事由で、具体的には次のような類型の外国人が入国を拒否されます。
(1)保健・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者
(2)反社会性が強いと認められることにより上陸を認めることが好ましくない者
(3)我が国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者
(4)我が国の利益又は公安を害するおそれがあるため上陸を認めることが好ましくない者
(5)相互主義に基づき上陸を認めない者
下記の項目でそれぞれ解説していきます。
(上陸の拒否)入管法第五条 条文は長いので参考程度で良いと思います。
次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に上陸することができない。
一 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成十年法律第百十四号)に定める一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症若しくは指定感染症(同法第四十四条の九の規定に基づき、政令で定めるところにより、同法第十九条又は第二十条の規定を準用するものに限る。)の患者(同法第八条(同法第四十四条の九において準用する場合を含む。)の規定により一類感染症、二類感染症、新型インフルエンザ等感染症又は指定感染症の患者とみなされる者を含む。)又は新感染症の所見がある者
二 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者又はその能力が著しく不十分な者で、本邦におけるその活動又は行動を補助する者として法務省令で定めるものが随伴しないもの
三 貧困者、放浪者等で生活上国又は地方公共団体の負担となるおそれのある者
四 日本国又は日本国以外の国の法令に違反して、一年以上の懲役若しくは禁錮又はこれらに相当する刑に処せられたことのある者。ただし、政治犯罪により刑に処せられた者は、この限りでない。
五 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある者
五の二 国際的規模若しくはこれに準ずる規模で開催される競技会若しくは国際的規模で開催される会議(以下「国際競技会等」という。)の経過若しくは結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもつて、人を殺傷し、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は建造物その他の物を損壊したことにより、日本国若しくは日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられ、又は出入国管理及び難民認定法の規定により本邦からの退去を強制され、若しくは日本国以外の国の法令の規定によりその国から退去させられた者であつて、本邦において行われる国際競技会等の経過若しくは結果に関連して、又はその円滑な実施を妨げる目的をもつて、当該国際競技会等の開催場所又はその所在する市町村(特別区を含むものとし、地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第二百五十二条の十九第一項の指定都市にあつては、区又は総合区)の区域内若しくはその近傍の不特定若しくは多数の者の用に供される場所において、人を殺傷し、人に暴行を加え、人を脅迫し、又は建造物その他の物を損壊するおそれのあるもの
六 麻薬及び向精神薬取締法(昭和二十八年法律第十四号)に定める麻薬若しくは向精神薬、大麻取締法(昭和二十三年法律第百二十四号)に定める大麻、あへん法(昭和二十九年法律第七十一号)に定めるけし、あへん若しくはけしがら、覚醒剤取締法(昭和二十六年法律第二百五十二号)に定める覚醒剤若しくは覚醒剤原料又はあへん煙を吸食する器具を不法に所持する者
七 売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事したことのある者(人身取引等により他人の支配下に置かれていた者が当該業務に従事した場合を除く。)
七の二 人身取引等を行い、唆し、又はこれを助けた者
八 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和三十三年法律第六号)に定める銃砲、クロスボウ若しくは刀剣類又は火薬類取締法(昭和二十五年法律第百四十九号)に定める火薬類を不法に所持する者
九 次のイからヘまでに掲げる者で、それぞれ当該イからヘまでに定める期間を経過していないもの
イ 第六号又は前号の規定に該当して上陸を拒否された者 拒否された日から一年
ロ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者で、第五十二条第五項の決定を受け、同項に規定する法務省令で定める日までに同条第四項の規定による許可に基づき退去したもの(別表第一の三の表の短期滞在の項の下欄に掲げる活動を行おうとする者を除く。) 退去の日から一年
ハ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者で、その退去の日前に本邦からの退去を強制されたこと及び第五十五条の八十五第一項の規定による出国命令により出国したことのないもの(ロに掲げる者を除く。) 退去の日から五年
ニ 第二十四条各号(第四号オからヨまで及び第四号の三を除く。)のいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者(ロ及びハに掲げる者を除く。) 退去の日から十年
ホ 第五十五条の八十五第一項の規定による出国命令により出国した者(ヘに掲げる者を除く。) 出国した日から一年
ヘ 第二十四条の三第一号ロに該当する者であつて、第五十五条の八十五第一項の規定による出国命令により出国したもの(別表第一の三の表の短期滞在の項の下欄に掲げる活動を行おうとする者に限る。) 出国した日から五年
九の二 別表第一の上欄の在留資格をもつて本邦に在留している間に刑法(明治四十年法律第四十五号)第二編第十二章、第十六章から第十九章まで、第二十三章、第二十六章、第二十七章、第三十一章、第三十三章、第三十六章、第三十七章若しくは第三十九章の罪、暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)第一条、第一条ノ二若しくは第一条ノ三(刑法第二百二十二条又は第二百六十一条に係る部分を除く。)の罪、盗犯等の防止及び処分に関する法律(昭和五年法律第九号)の罪、特殊開錠用具の所持の禁止等に関する法律(平成十五年法律第六十五号)第十五条若しくは第十六条の罪又は自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律(平成二十五年法律第八十六号)第二条若しくは第六条第一項の罪により懲役又は禁錮に処する判決の宣告を受けた者で、その後出国して本邦外にある間にその判決が確定し、確定の日から五年を経過していないもの
十 第二十四条第四号オからヨまでのいずれかに該当して本邦からの退去を強制された者
十一 日本国憲法又はその下に成立した政府を暴力で破壊することを企て、若しくは主張し、又はこれを企て若しくは主張する政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入している者
十二 次に掲げる政党その他の団体を結成し、若しくはこれに加入し、又はこれと密接な関係を有する者
イ 公務員であるという理由により、公務員に暴行を加え、又は公務員を殺傷することを勧奨する政党その他の団体
ロ 公共の施設を不法に損傷し、又は破壊することを勧奨する政党その他の団体
ハ 工場事業場における安全保持の施設の正常な維持又は運行を停廃し、又は妨げるような争議行為を勧奨する政党その他の団体
十三 第十一号又は前号に規定する政党その他の団体の目的を達するため、印刷物、映画その他の文書図画を作成し、頒布し、又は展示することを企てる者
十四 前各号に掲げる者を除くほか、法務大臣において日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者
2 法務大臣は、本邦に上陸しようとする外国人が前項各号のいずれにも該当しない場合でも、その者の国籍又は市民権の属する国が同項各号以外の事由により日本人の上陸を拒否するときは、同一の事由により当該外国人の上陸を拒否することができる。
保健・衛生上の観点から上陸を認めることが好ましくない者
感染症の患者やその疑いのある方であったり、精神上の障害によって正常な判断が下せない方。貧困者、放浪者などで日本に入国しても生活保護を受ける必要性の高い方などが当てはまります。
反社会性が強いと認められることにより上陸を認めることが好ましくない者
- 日本国や外国を問わず、法令に違反して1年以上の懲役・禁固刑に処せられたことのある方がここに当てはまります。尚、執行猶予を受けてその期間を満了していたとしても対象になるため注意が必要です。(※但し、政治犯罪については除くと規定されています)
- 麻薬、大麻、あへん、覚醒剤又は向精神薬の取締りに関する日本国又は日本国以外の国の法令に違反して刑に処せられたことのある方もそうです。よく外国の映画で10代の子が大麻で停学処分を受けたシーンなどがありますが、「上陸拒否事由ですよ」と毎回考えてしまうのは職業病ですね。苦笑(ちなみにこの麻薬関係の罪はかなり厳しく審査されます)
- 売春又はその周旋、勧誘、その場所の提供その他売春に直接に関係がある業務に従事したことのある方も入国拒否事由に該当します。
その他にも、入国をされると日本社会に悪影響を及ぼす恐れのある方は入国できません。
我が国から退去強制を受けたこと等により上陸を認めることが好ましくない者
日本から不法残留等を理由に退去強制された者や出国命令を受けて出国した者は、入管法の規定に基づき、原則として、一定期間(これを上陸拒否期間と言います。)日本に上陸することはできません。具体的には以下のとおりです。
- いわゆるリピーター(過去に日本から退去強制されたり、出国命令を受けて出国したことがある者)の上陸拒否期間は、退去強制された日から10年
- 退去強制された者((1)の場合を除く)の上陸拒否期間は、退去強制された日から5年
- 出国命令により出国した者の上陸拒否期間は、出国した日から1年
我が国の利益又は公安を害するおそれがあるため上陸を認めることが好ましくない者
入管法の定めの中でもかなり物騒な項目です。具体例としては日本でクーデターを企てたり、政治的な犯罪を計画・実行したりなどがこの項目に当てはまります。ここまでの内容になるとあまりお目にかかることはないと思います。
相互主義に基づき上陸を認めない者
相互主義というのはあまり聞きなれない言葉かも知れません。国際法上の原則として、相手がこちらに利益や不利益をもたらすなら、こちらも相手に同じ利益や不利益をもたらすという考え方です。もっと簡単に言うと、「日本人の入国を制限する国の方は、日本もその国の方の入国を制限しますよ」と言う意味だと思ってください。
虚偽申請をしてしまったら?・・・ビザは取消&退去強制
実は刑務所に入っていたことを隠していたり、麻薬で逮捕された経験があったりなど、不都合なことは隠しておきたい気持ちは理解出来ます。人間というのはそういうものだと思うからです。しかし、日本のビザを取得する際に嘘の申告をしてしまうと、申請が不許可になるだけでなく、既に取得した在留資格が取消しとなったり、退去強制の事由となったりするので、絶対にしてはなりません。(退去強制になった場合は5年間、日本への上陸が拒否されます)
虚偽申請は罰則も重たいです
在留資格等不正取得罪
虚偽の内容や不正な手段で在留資格を取得した場合、3年以下の懲役もしくは禁固や300万円以下の罰金、またはそれらの併科(両方の罰則を受ける)が科されます。
営利目的在留資格等不正取得助長罪
こちらは営利目的で、上記の不正取得を手助けした方に適用される罪です。3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金、またはこれを併科すると規定されています。
まとめ
今回は入管法における上陸拒否事由について解説させていただきました。ビザを申請する際に必ずチェックする項目の一つになりますので、絶対に嘘のないように正直に申告していただけますようお願いいたします。
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