日本での生活を始めるためには在留資格を取る必要があります。このとき大切になるのが「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」という、とても大事な観点があります。この2つの観点から、入国管理局はその方が「日本で生活していくのに問題ない人か?」を審査していると考えてください。
ではこの「在留資格該当性」と「上陸許可基準適合性」とは具体的にどういうものか?この記事で解説していきます。
在留資格該当性とは?
外国籍の方が日本で生活するために規定されている法律を「入管法」といいます。この法律でいくつかの在留資格というカテゴリー分けがされていて、日本でどのような活動をするかによって、それに合わせた在留資格を選択して取得することになるのです。そして、このときに選択した在留資格に沿った活動をすることが認められます。逆に言うと、この時に取得した在留資格以外の活動をしていなければ、在留許可が取消されたり、更新が出来なかったり、そもそも取得すること自体が出来ないということになります。分かりやすく要約すると「外国人が日本で行おうとする活動が、入管法で決められている在留資格ごとの活動に該当していること」と定義しています。それぞれの例も見て行きましょう。
例・・・在留資格に該当している場合
例えば、大学を出て英語・日本語を始め様々な見識を学び、「通訳」として日本の起業に雇われることなった場合は「技術・人文知識・国際業務」という在留資格を取得することになります。この時は以下のボックスで囲んだ中の要件い該当しているか?を審査されることになります。
本邦の公私の機関との契約に基づいて行う理学、工学その他の自然科学の分野若しくは法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務又は外国の文化に基盤を有する思考若しくは感受性を必要とする業務に従事する活動(入管法別表第一の一の表の教授、芸術、報道の項に掲げる活動、二の表の経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、企業内転勤、介護、興行の項に掲げる活動を除く。)
該当例としては、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等。
引用:出入国管理局HP(技術・人文知識・国際業務より)
例・・・在留資格に該当していない場合
逆に在留資格に該当していない場合はどうなるでしょうか? 例えば、「外国料理店の調理担当者」として日本で働くことになっている場合に、上記の「技術・人文知識・国際業務」で申請してしまった場合には、上のボックスの活動ではないため、許可が下りないことになるのです。この方の場合は「技能」という在留資格で在留許可の申請をしなければならなかったということです。(もちろん、「技能」の資格にも審査基準があるので、その基準を満たしているかの審査をされます)
このように、日本での活動内容に応じた在留資格を間違えることなく選択する必要があり、またその審査基準を「自分はちゃんと満たしていますよ」ということを申請書や添付書類、申請理由書などで証明することになります。
上陸許可基準適合性とは?
在留資格該当性ともう一つ、大切な概念が「上陸許可基準適合性」です。在留資格認定証明書の交付を受けるために必要な条件が定められています。この条件は最初に入国するときの認定を受ける時だけでなく、在留資格を変更したり、更新したりする場合にも同様に審査の基準にしています。要約すると許可を得る為には「外国人が基準省令において在留許可ごとに定められた基準に適合していること」となります。この要件に基づいて在留許可を出すかどうかを決めていることになります。
上陸許可基準の一例を確認してみます
在留資格該当性でも参照した「技術・人文知識・国際業務」の上陸許可基準適合性を参照してみます。ボックスの中に記載した内容のうち、一定の要件を満たすことが必要になります。項目が多いので、逆に「上陸許可基準に適合していない」ケースをご紹介します。
申請人が次のいずれにも該当していること。ただし、申請人が、外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第九十八条に規定する国際仲裁事件の手続等及び国際調停事件の手続についての代理に係る業務に従事しようとする場合は、この限りでない。
一 申請人が自然科学又は人文科学の分野に属する技術又は知識を必要とする業務に従事しようとする場合は、従事しようとする業務について、次のいずれかに該当し、これに必要な技術又は知識を修得していること。ただし、申請人が情報処理に関する技術又は知識を要する業務に従事しようとする場合で、法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する試験に合格し又は法務大臣が告示をもって定める情報処理技術に関する資格を有しているときは、この限りでない。
イ 当該技術若しくは知識に関連する科目を専攻して大学を卒業し、又はこれと同等以上の教育を受けたこと。
ロ 当該技術又は知識に関連する科目を専攻して本邦の専修学校の専門課程を修了(当該修了に関し法務大臣が告示をもって定める要件に該当する場合に限る。)したこと。
ハ 十年以上の実務経験(大学、高等専門学校、高等学校、中等教育学校の後期課程又は専修学校の専門課程において当該技術又は知識に関連する科目を専攻した期間を含む。)を有すること。
二 申請人が外国の文化に基盤を有する思考又は感受性を必要とする業務に従事しようとする場合は、次のいずれにも該当していること。
イ 翻訳、通訳、語学の指導、広報、宣伝又は海外取引業務、服飾若しくは室内装飾に係るデザイン、商品開発その他これらに類似する業務に従事すること。
ロ 従事しようとする業務に関連する業務について三年以上の実務経験を有すること。ただし、大学を卒業した者が翻訳、通訳又は語学の指導に係る業務に従事する場合は、この限りでない。
三 日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること。
例・・・上陸許可基準に適合していないケース
例えば、アメリカの大学を卒業していて日本の会社で翻訳・通訳をすることになっているとします。ここまでは良いのですが、その会社のお給料が日本人の従業員に比べて安く設定されている場合などはどうでしょうか? この場合、ボックスの中の(三)の要件を満たさなくなりますので、上陸許可基準に適合していないことになる為、残念ながら在留許可はおりません。
その他の審査基準となる項目
一番大切な点は上記の2点になるのですが、他にも重要になってくる要件がありますので、簡単にご紹介しておきます。(細かい解説はまた改めて別の記事でご案内いたします)
申請の非虚偽性
当たり前ですが、嘘の申告をして入国することは出来ません。虚偽がないように色々な資料を提出してもらって事前に審査をするのですが、仮に嘘を書いた書類で入国して、それが後で発覚した場合には在留資格が取消しになるだけでなく、
当たり前ですが、嘘の申告をして入国することは出来ません。虚偽がないように色々な資料を提出してもらって事前に審査をするのですが、仮に嘘を書いた書類で入国して、それが後で発覚した場合には在留資格が取消しになるだけでなく、在留資格等不正取得罪(3年以下の懲役・禁錮または300万円以下の罰金、それらの併科という大変重たい罪です)が適用される場合があります。絶対にしてはいけません。
素行要件
これまでに前科がないかも審査の際に確認されます。交通違反が数回程度などであればそれほど問題にはなりませんが、例えば過去に麻薬などの違法薬物で逮捕歴があったりする場合は、かなり審査は厳しいものになると考えた方が良いです。また、先ほど例に出した虚偽申請も起こりやすいところになります。前科があるのは言いにくいのは分かりますが、かといってそれを隠して入国しようとしてしまうと、別の罪になってしまう可能性もありますので正直に申請するようにしてください。
勤め先の会社も審査される?
実は在留資格を取得する際は、その勤務先の会社も審査をされることになります。せっかく在留資格を取得して日本に来たにも関わらず、勤め先の会社が倒産してしまったりすると路頭に迷ってしまうことになるためです。お勤め先の会社の「安定性・継続性」も申請書類の法定調書合計表や決算書などで審査されることも頭に入れておきましょう。
まとめ
今回は在留資格を取得(更新の際もですが)する際に、最も大事になる概念である「在留資格該当性」「上陸許可基準適合」について解説させていただきました。活動内容に応じた在留資格を選択出来ていなかったり、添付書類などで基準適合性が立証できなかったりすると、不許可になってしまう場合もございます。正しい知識を持って申請をすれば大丈夫なのですが、中々大変なところもありますので、お困りの方や心配な方は、行政書士にご相談頂けますようお願いいたします。
項目 | 料金 |
在留資格認定証明書申請(経営・管理以外) | 100,000円 |
在留資格変更申請(経営・管理以外) | 90,000円 |
在留資格更新申請 | 40,000円 |
就労資格証明書申請 | 90,000円 |
永住許可申請 | 150,000円 |
帰化許可申請(経営・管理以外) | 200,000円 |
帰化許可申請(個人事業主及び法人役員) | 250,000円 |
資格外活動許可申請 | 30,000円 |
再入国許可申請 | 20,000円 |
在留資格認定証明書申請(経営・管理) | 200,000円 |
在留資格変更申請(経営・管理) | 150,000円 |