「経営管理」の在留資格を取得する為には「事業計画書」が鍵を握るという記事を書きました。ではこの計画書には何を書いて行けば良いのか? どのような情報があれば事業計画書が書けるのか?を解説していきます。このプロセスが一番大変ですが、今後の経営が上手く行くかもこの計画書にかかっていますので、しっかりと考えてみてください。
「事業計画書」は、会社の安定性・継続性を証明する為に書きます
事業概要
経営しようとする会社が何を扱う会社なのかを決めます。ご自身の経験や大学などで学んできたことなどが参考になると思います。既にご両親が会社を経営されていて、日本法人を作るといった内容でも良いです。この事業概要は会社設立の事業目的欄にも記載しますので、現在~近い将来やりたいと思っているものをピックアップしてください。例としてはこのような感じです。
- 日本で不動産投資とそれを管理する会社を作りたい
- 母国料理のレストラン経営をしたい
- 貿易業を行い、日本で仕入れた商品を母国に輸出したり、母国の商品を輸入して日本で販売したい
- 翻訳、通訳をする傍ら、日本語学校の運営をしたい
- 自社で開発した美容機器を日本を拠点に販売したい
他にも色々な会社があると思いますが、先ずはどのような事業で収益を上げて行きたいのか?を起点に考えると良いです。審査時に入管が知りたいのは、「ちゃんと事業実態があって、安定性・継続性が見込める会社かどうか?」という点になります。
参入する業界の市場規模
これは一言でいうと、「なぜその事業で、日本で勝負しようと思ったのか?」という観点です。既に飽和している業界や斜陽産業で勝負しても勝ち目は薄いです。しかし例えば、今すごく増えていると感じるのが「日本の不動産を積極的に売買する投資家や、そのアテンドをする不動産業者」です。中国の方が多いですね。
実は中国人投資家にとって、日本の不動産はとっても魅力的な市場らしいです。その要因となっているのは、円安の影響もそうですが中国やアメリカ、ヨーロッパの不動産に比べて、日本の不動産は割安のようです。その割に資産価値の乱高下が少なくて扱いやすいのが魅力だと言われている投資家さんもおられました。このように、「なぜ日本で不動産を積極的に売買したいのか?」を、しっかりとした理由と自分の計画を盛り込んで行くことがカギになります。
何を販売するのか?
扱いものが決まったら、具体的に何を販売するのかを考えて行きます。それはいくらぐらいで販売できるもの(売上高)ですか? 仕入れや製造などの「売上原価」はいくら位かかるのか? 広告費や人件費などの「販売費および一般管理費」はいくらくらいかかるのか?も合わせて考えていきます。
ちなみに「オリジナルの化粧品を販売したい」というビジネスで例えると、その化粧品はどのような化粧品で、それを使うことによってどのようなメリットを顧客に提供できるのか?なども、ちゃんと説明できるように事業計画に落とし込みます。その化粧品を使用することで、得られる効果や他と比べてどうなのか?も分かりやすく書いていくとより良いです。(必要であれば写真も付けます。特に美容系のものは写真は分かりやすくて良いですね)
ターゲットとする顧客層
誰を相手に販売をするのか?も重要なテーマです。英語のことわざで「エスキモーに氷を売る(Sell ice to Eskimos)」という言葉があります。このことわざは、「相手にとって必要のないものでも言葉巧みに説得して売る」という意味で使われるのですが、実際にビジネスとしてはどうだと思いますか? 普通に考えて買わないだろうな・・・と感じるのではないでしょうか? 入国管理局の審査をする人も、同じように考えます。このビジネス計画なら上手くやって行けそうだな。と思ってもらえるような事業計画を立てるようにしましょう。
自社の強み(他社との差別化)
会社経営をしていく中で、もう一つ重要な視点が「自社が他の同業者とどこが違うのか?」という視点です。全く新しいビジネスでない限り、同業他社で既に先に同じ事業をしている会社はあるはずです。その中に参入して行く中で、「他社ではなくて自分を選んでもらえる根拠は何なのか?」を計画書に落とし込んで行くことが大事です。例えば不動産の売買をするのであれば、「豊富な資金を持っている投資家と繋がりが多い」「そもそも自分が豊富な資金を持っている」「これまで世界中で投資をしてきていて豊富な実績があり、その経験を元に日本に参入する」など、自社の明確な強みがあるとより分かりやすい計画が立てられます。
集客方法(マーケティング)
どんな事業で、誰に、何を売るのか? 自社の強みは? ここまでピックアップが出来たら具体的にどのようにPRをしていくのかの計画を立てます。日本で仕入れをして自国で売る、または自国の商品を仕入れて日本で売るといった貿易業のビジネスをするのであれば、SNSを活用するのか、ECサイトなどで販売していくのかなど、どういった形で集客するのかを考えます。広告費がかかるのであれば、この後で解説する「収支計画」にもちゃんと予算を組んでおく必要があります。また、販売先だけではなく、仕入れ先も決まっているようであれば、その仕入れ先の情報も記載します。既に仕入れの契約を交わしているようであれば、契約書のコピーを提出することもやった方がいいです。
(この辺りのことは、入国管理局のHPを読んでいても出てこない情報です)
収支計算書を書いてみましょう
ある程度の情報が揃ったら、収支計算書を書いてみます。簿記・会計の知識のある方はすぐ書けると思いますが、そうでない方はどうやって良いのか分からないと思うので、基本的な考え方を書いておきます。
※分かりやすくボールペン専門店で、扱うアイテムは1つと仮定します
項目 | 金額(金額は仮) | 金額の根拠 |
予想売上高 | +10,000,000円 | 10,000円のボールペンを1000個販売 |
予想仕入高 | -3,000,000円 | ボールペンの仕入れは1本あたり@3,000円 |
販管費 | -5,000,000円 | 家賃・人件費・広告費・通信費など、販売の為の経費 |
※損益計算書 | これらをまとめたもの | この表の話だけで完結すれば+2,000,000円利益が出ますね |
※損益計算書は簿記で書くことの多い図ですが、右の図のイメージになります。要するに売上から仕入れとか人件費とかの原価に相当する部分を引いた結果、プラスが出ていれば黒字=上手くいっている状態。マイナスが出たら赤字=上手く行っていない状態。と言うことです。
収支計画書は概ね3年分の計画を記載します
収支計画は大体1~3年目について、どのような収支計画になるかの見通しを提出することになります。実際にその通りになるかはやってみなければ分かりませんが、具体的な根拠を元に経営計画を立てているかを審査されます。
「先生が全部書いて下さい」は対応出来ません
ここまでの話をすると時々、「難しそうなので全部先生が書いてください」と言われることがあります。もちろん、最終的に申請書をまとめて提出するときは、見た目にも分かりやすくなるようにグラフ、写真、理由書など、様々な方法で審査官が分かりやすい資料をこちらで書きます。ですが、残念ながら数字の根拠となる、大元の計画の部分はちゃんと書いていただいています。なぜなら、経営管理ビザは取得して終わりではありません。1年後には更新をしないといけませんので、ちゃんと自分で立てた経営計画に基づいて、会社の経営をしていただかないといけないからです。しっかりと日本で事業を展開しようと頑張っていただける方には、全力でお手伝いさせていただきます。
まとめ
今回は経営管理のビザを取得する為の事業計画について解説させていただきました。何度も書きますが、事業計画は経営管理ビザを申請するに当たって一番大事なポイントであり、日本に来てからの経営の指針にもなって行くものなので、しっかりと考えて書くようにしてください。綺麗な資料は作らなくて大丈夫ですが、数字の根拠になる計画の部分はご自身で書いていただきます。お手伝いが必要な際はお問合せくださいませ。